釧路湿原


 所在地:北海道釧路市、釧路町、標茶町、鶴居村
 湿地のタイプ:泥炭地、淡水湖沼、河川
 標高:3〜10メートル
 面積:7,863ヘクタール
 登録年月日:1980年6月17日 

 ||| 湿地の概要 |||

 北海道東部、釧路市の北約5キロに位置する釧路湿原は、面積約22,000ヘクタールの日本でもっとも広い湿原です。
 かつては海でしたが、海が後退し、太平洋との開口部に砂嘴(さし)が発達するにつれて汽水湖となり、3000年ほど前から砂嘴の内側の湖底に泥炭の推積がはじまって、次第に今のような湿原が形づくられました。
 広大な湿原域の約80パーセントは、ヨシ、スゲにおおわれた低層湿原ですが、中央部にはミズゴケの高層湿原や、低層湿原から高層湿原への遷移の過程にあるツルコケモモの分布する中間湿原が点在しています。釧路川とその支流が網の目のように走り、東側には塘路湖(とうろこ)、シラルトロ湖、達古武湖(たっこぶこ)の3つの淡水湖沼があります。
 湿原の東、北、西は丘陵地で、かつては天然林がひろがっていました。
 1980年、日本がラムサール条約に加入したとき、第1号登録湿地に指定され、1987年には国立公園となりました。
 「北東アジア地域ツル類重要生息地ネットワーク」と「東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク」に参加しています。

 ||| 生物多様性 |||

 釧路湿原は豊かな生物多様性を支え、植物約600種、ほ乳類26種、両生・は虫類9種、鳥類約170種、昆虫類約1,150種、魚類34種が確認されています。
 そのなかには、世界的に絶滅の危機にあるタンチョウやシマフクロウ、オジロワシ、オオワシなどが含まれています。日本では唯一のキタサンショウウオの生息地で、イイジマルリボシヤンマなど固有の昆虫も記録されています。また、注目すべき植物としては、ハナタネツケバナ、クシロハナシノブなどがあります。

 ||| 保全と管理 |||

 釧路湿原は、国設鳥獣保護区特別保護地区および国立公園としての保全管理の方針のもと、環境省によって管理されています。湿原の周囲には環境教育や普及啓発の拠点として温根内ビジターセンター、塘路湖エコミュージアムセンター、細岡ビジターラウンジが整備されています。湿原の景観を楽しむための北斗、細岡、岩保木(いわぼっき)、コッタロ、サルボなどの展望地が東・西・北の要所にあり、自然観察のための木道も整備されています。
 広大な湿原は、1市2町1村にまたがっており、施設の管理・運営には、それらの地元の自治体のほか、研究機関、NGO、地域住民がさまざまに協力しています。

 ||| 住民参加と賢明な利用 |||

 釧路湿原は、ラムサール条約の第1号登録湿地として、湿原の価値と保全の重要性を日本に普及させる先導役となりました。
 1993年にはアジア地域で初めて釧路市でラムサール条約第5回締約国会議が開催され、95カ国、約1200人の参加者を、延べ4,000人の地域住民が通訳や会議運営、自然観察ガイドのボランティアとしてサポートしました。この会議開催をきっかけに、釧路湿原と日本の湿地全体の保全に対する意識は大きく変わりました。
 釧路湿原は、観光資源としても大きな価値をもち、今では年間をとおして多数の観光客が訪れます。
 釧路湿原をはじめとする北海道地域の湿地に生息するタンチョウは、道東観光のシンボル的な存在です。1890年ごろ一時は絶滅したと思われていましたが、1924年に釧路湿原で少数が生き残っているのが発見されました。そして1952年から地元の人びとによる給餌が成功し、現在の生息数は、約1,000羽にまで回復しています。
 近年釧路湿原には、開発による面積の減少や、湿原の乾燥化など、急激な環境の変化がおきています。こうした現状をふまえ、関係省庁や自治体、専門家、NGO、地域住民などの参加による「釧路湿原自然再生協議会」が2003年に設立され、湿原の自然再生のためのさまざまな取り組みが進められています。  

釧路湿原国立公園協議会 http://city.hokkai.or.jp/~kkr946/


厚岸湖・別寒辺牛(あっけしこ・べかんべうし)湿原


 所在地:北海道厚岸町
 湿地のタイプ:汽水湖、泥炭地、河川
 標高:0〜20メートル
 面積:5,277ヘクタール
 登録年月日:1993年6月10日

 北海道東部を北から南に流れ下る別寒辺牛川の中流部の湿原部分と、厚岸湖をあわせた部分がラムサール条約に登録されました。
 大部分は、ヨシ、スゲ、ハンノキからなる低層湿原ですが、約100ヘクタールの手つかずの高層湿原が残されており、低層湿原からの遷移の過程をみることができる貴重な湿原です。
 厚岸湖は、太平洋に面した厚岸湾とつながっている汽水湖で、水深は浅く、周囲を湿原や丘に囲まれています。冬も全面凍結しないため、オオハクチョウの日本最大の越冬地となっています。
 1993年に厚岸水鳥観察館が設立され、水鳥をはじめとする野生生物及び湿地保全・湿地の賢明な利用(ワイズユース)に関する調査研究、ビジターへの情報提供等の活動を行っています。

厚岸水鳥観察館ホームページ http://www.marimo.or.jp/AWOC/


霧多布(きりたっぷ)湿原


 所在地:北海道浜中町 
 湿地のタイプ:泥炭地、汽水湖
 標高:0〜3メートル
 面積:2,504ヘクタール
 登録年月日:1993年6月10日

 北海道東部の北太平洋に面した琵琶瀬湾(びわせわん)、浜中湾の海岸線に沿って弧を描いて広がっている湿原で、湿原の主要部分と湿原から西方の海岸線に隣接して位置する火散布沼(ひちりっぷぬま)、藻散布沼(もちりっぷぬま)がラムサール登録湿地です。
主にミズゴケの泥炭地からなり、中央部の803ヘクタールは「霧多布泥炭形成植物群落」として国の天然記念物に指定されています。
湿原のなかには汽水湖沼が多数残され、狭い水路で海とつながっていて、満潮時には琵琶瀬湾河口から湿原の中央部まで海水が流入します。
また、タンチョウの重要な生息地ともなっています。
浜中町は、1993年に霧多布湿原センターを設立し、主に湿地保全及び湿地のワイズユースに関する環境教育プログラムをビジターに提供しています。
また、地域住民の湿地保全・ワイズユースに対する関心が大変強く、霧多布湿原センター友の会(NGO)、霧多布湿原トラスト(NPO)などを設立して、地域レベルの保全・普及啓発活動を積極的に行っています。

霧多布湿原センターホームページ http://www.kiritappu.or.jp/center/


阿寒湖

阿寒湖
 所在地:北海道釧路市 
 湿地のタイプ:淡水湖(火口湖)
 標高:420メートル
 面積:1,318ヘクタール
 登録年月日:2005年11月8日

 北海道東部の釧路市にある二つの活火山、雄阿寒岳(1370m)と雌阿寒岳(1499m)にはさまれた阿寒湖は、これらの火山の活動によりつくられた、周囲25.9kmのカルデラ湖です。湖の周囲にはエゾマツ、トドマツなどの針葉樹と、ミズナラ、カツラなどの広葉樹が混在する深い森林が広がり、ペンケトー、パンケトーなどの湖沼が点在しています。阿寒湖を含む一帯は阿寒国立公園に指定されており、「火山と森と湖」のおりなす自然や温泉を楽しむため、国内外より多くの観光客が訪れています。
 阿寒湖の水深は平均17m、最深で42mあり、日本最大の淡水魚であるイトウやカワシンジュガイ(貝)など、多くの希少な水生動植物がみられます。なかでも、軟らかい塊をなして生育する藻類であるマリモは有名で、緑のビロードで作ったような、美しい球状となったものは、世界中阿寒湖でしかみられません。マリモの大きさは10〜20cm、中には30cmを超えるものもあり、国の特別天然記念物に指定されています。
 湖周辺の山林は、100年にわたり個人所有地として林業が営まれてきましたが、現在、その所有を受け継いだ自然保護財団が設立され、ヒグマやクマゲラが生息する、豊かな森林環境を維持するための管理運営がおこなわれています。


その他のラムサール条約登録湿地
クッチャロ湖

所在地:北海道浜頓別町
湿地のタイプ:淡水湖、湖岸河川流域の低湿地
標高:1〜2メートル
面積:1,607ヘクタール
登録年月日:1989年7月6日

ウトナイ湖

所在地:北海道苫小牧市
湿地のタイプ:淡水湖、湖岸河川流域の低湿地
標高:1〜5メートル
面積:510ヘクタール
登録年月日:1991年12月12日

伊豆沼・内沼

所在地:宮城県栗原市、登米市
湿地のタイプ:淡水湖沼、湖沼岸の低湿地、水田
標高:7メートル
面積:559ヘクタール
登録年月日:1985年9月13日

佐 潟

所在地:新潟県新潟市
湿地のタイプ:淡水湖、低湿地
標高:5メートル
面積:76ヘクタール
登録年月日:1996年3月23日

谷津干潟

所在地:千葉県習志野市
湿地のタイプ:干潟
標高:0メートル
面積:40ヘクタール
登録年月日:1993年6月10日

片野鴨池

所在地:石川県加賀市
湿地のタイプ:池、低湿地、水田
標高:2.5〜8.0メートル
面積:10ヘクタール
登録年月日:1993年6月10日

琵琶湖

所在地:滋賀県大津市ほか9市5町
湿地のタイプ:淡水湖、低湿地
標高:86メートル
面積:65,984ヘクタール(2008年に区域拡張)
登録年月日:1993年6月10日

琵琶湖水鳥・湿地センターのホームページ
http://www.biwa.ne.jp/~nio/

漫湖

所在地:沖縄県那覇市、豊見城村
湿地のタイプ:河口湖、河口干潟、マングローブ
標高:-0.5メートル
面積:58ヘクタール
登録年月日:1999年5月15日

藤前干潟

所在地:愛知県名古屋市
湿地のタイプ:河口干潟
標高:−4〜0.8メートル
面積:323ヘクタール
登録年月日:2002年11月2日

宮島沼

所在地:北海道美唄市
湿地のタイプ:淡水湖
標高:13メートル
面積:41ヘクタール
登録年月日:2002年11月2日

秋吉台地下水系

所在地:山口県美弥市
湿地のタイプ:地下水系・カルスト
標高:80〜425.5メートル
面積:563ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

風蓮湖・春国岱

所在地:北海道根室市、別海町
湿地のタイプ:汽水湖、干潟、藻場
標高:1メートル
面積:6,139ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

仏沼

所在地:青森県三沢市
湿地のタイプ:低層湿原
標高:0〜10メートル
面積:222ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

藺牟田池

所在地:鹿児島県薩摩川内市
湿地のタイプ:淡水湖、低層湿原
標高:296メートル
面積:60ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

蕪栗沼・周辺水田

所在地:宮城県栗原市、登米市、田尻町
湿地のタイプ:堰止湖、水田
標高:最低5.7メートル
面積:423ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

慶良間諸島海域

所在地:沖縄県渡嘉敷村、座間味村
湿地のタイプ:サンゴ礁
標高:0メートル
面積:353ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

くじゅう坊ガツル・タデ原湿原

所在地:大分県竹田市、九重町
湿地のタイプ:中間湿原
標高:1,230〜1,270メートル(坊ガツル)1,000〜1,040メートル(タデ原)
面積:91ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

串本沿岸海域

所在地:和歌山県串本町
湿地のタイプ:サンゴ群集
標高:−20〜0メートル
面積:574ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

三方五湖

所在地:福井県若狭町、美浜町
湿地のタイプ:汽水湖
標高:0メートル
面積:1,110ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

名蔵アンパル

所在地:沖縄県石垣市
湿地のタイプ:河口湿地、マングローブ林
標高:0メートル
面積:157ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

中海

所在地:鳥取県米子市、境港市、島根県松江市、安来市、東出雲町
湿地のタイプ:汽水湖
標高:0メートル
面積:8,043ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

野付半島・野付湾

所在地:北海道別海町、標津町
湿地のタイプ:藻場、干潟、塩性湿地
標高:0〜10メートル
面積:6,053ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

奥日光の湿原

所在地:栃木県日光市
湿地のタイプ:高層・中間湿原、淡水湖
標高:1,475メートル(湯の湖)、1,400メートル(戦場ヶ原)、1,410メートル(小田代原)
面積:260ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

尾瀬

所在地:福島県檜枝岐村、群馬県片品村、新潟県魚沼市
湿地のタイプ:高層湿原、淡水湖
標高:1,400〜1,420メートル(湿原部)、2,356メートル(最高地点)
面積:8,711ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

サロベツ原野

登録年月日:北海道豊富町、幌延町
湿地のタイプ:高層・中間・低層湿原、淡水湖
標高:3〜7メートル
面積:2,560ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

宍道湖

所在地:島根県松江市、出雲市、斐川町
湿地のタイプ:汽水湖
標高:0.3メートル
面積:7,652ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

濤沸湖

所在地:北海道網走市、小清水町
湿地のタイプ:汽水湖
標高:1メートル
面積:900ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

雨竜沼湿原

所在地:北海道雨竜町
湿地のタイプ:高層湿原
標高:850〜900メートル
面積:624ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

屋久島永田浜

所在地:鹿児島県屋久島町
湿地のタイプ:砂浜海岸
標高:10m以下
面積:10ヘクタール
登録年月日:2005年11月8日

化女沼

所在地:宮城県大崎市
湿地のタイプ:淡水湖(ダム湖)
標高:25.9メートル
面積:34ヘクタール
登録年月日:2008年10月30日

大山上池・下池

所在地:山形県鶴岡市
湿地のタイプ:淡水湖(貯水池)
標高:12メートル
面積:39ヘクタール
登録年月日:2008年10月30日

瓢湖

所在地:新潟県阿賀野市
湿地のタイプ:淡水湖(貯水池)
標高:8.6メートル
面積:24ヘクタール
登録年月日:2008年10月30日

久米島の渓流・湿地

所在地:沖縄県久米島町
湿地のタイプ:渓流
標高:120-280メートル
面積:255ヘクタール
登録年月日:2008年10月30日

久米島の渓流・湿地

所在地:沖縄県久米島町
湿地のタイプ:渓流
標高:120-280メートル
面積:255ヘクタール
登録年月日:2008年10月30日

大沼

所在地:北海道亀田郡七飯町
湿地のタイプ:淡水湖、堰止湖群
標高:130メートル
面積:1,236ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

渡良瀬遊水地

所在地:茨城県古河市、栃木県栃木市、小山市、下都賀郡野木町、群馬県邑楽郡板倉町、埼玉県加須市
湿地のタイプ: 低層湿原、人工湿地
標高:8~23メートル
面積:2,861ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

立山弥陀ヶ原・大日平

所在地:富山県中新川郡立山町
湿地のタイプ:雪田草原
面積:574ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

中池見湿地

所在地:福井県敦賀市
湿地のタイプ:低層湿原
標高:1040〜2120メートル
面積:87ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

東海丘陵湧水湿地群

所在地:愛知県豊田市
湿地のタイプ:非泥炭性湿地(貧栄養性湿地)
標高:111〜254メートル
面積:23ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

円山川下流域・周辺水田

所在地:兵庫県豊岡市
湿地のタイプ:河川、周辺水田
標高:0~20メートル
面積:560ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

宮島

所在地:広島県廿日市市
湿地のタイプ:砂浜海岸、塩性湿地、河川
標高:0~2メートル
面積:142ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

荒尾干潟

所在地:熊本県荒尾市
湿地のタイプ:干潟
標高:0メートル
面積:754ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日

与那覇湾

所在地:沖縄県宮古島市
湿地のタイプ:干潟
標高:0メートル
面積:704ヘクタール
登録年月日:2012年7月3日


日本の登録湿地に関する詳しい情報は、「ラムサール条約登録湿地関係市町村会議」のホームページ http://www.ramsarsite.jp/jp_index.html でも見ることができます。


出典及び参考文献
「人と湿地 −その賢明な利用、管理と参加−」
© 環境庁 1999
「日本のラムサール登録湿地」
© 環境庁 2005