ツル専門家のブータン訪問

2005年11月22日(火)から2006年1月10日(火)まで、タンチョウ保護調査連合代表の百瀬邦和氏をJICA専門家としてブータンに派遣しました。
百瀬氏はオグロヅルの越冬地であるフォブジカ谷にて、ブータン王立自然保護協会のスタッフと地域住民による調査グループをたちあげ、ツル飛来数のカウント調査や、行動調査を実施しました。この時カウントした飛来数(355羽)が、2005年度冬の飛来数の公式記録となりました。さらに、ツルを捕獲して、渡りのルートや行動の詳細について調べるための、足環標識と発信機を装着しました。百瀬氏の帰国後にも、指導を受けた現地のスタッフがこれらの調査をひきつぎ、さらなるツルの捕獲と標識・発信機の取り付けに成功しています。
これらの成果や専門家の目でみたフォブジカ谷のツル生息地の環境について、2006年3月に開催された「国際ツルフォーラム」で百瀬氏本人による発表がおこなわれ、今後のプロジェクト課題だけでなく、日本におけるツルとの共存の「あるべきすがた」についても話がおよびました。


冬の湿原エコツアー「歩くスキー&雪の結晶観察」の実施

平成18年2月25日(土)に温根内ビジターセンターを会場に冬の湿原を楽しむエコツアーを開催しました。釧路地域在住の市民9名が参加し、午前中は温根内ビジターセンターの若山公一指導員の案内のもと、歩くスキーを使用し、雪の無い季節には入ることのできない林の中や木道などからキツツキなどが穴をあけた樹木やタンチョウ、ユキウサギ、ヤチネズミなどの動物の足跡や食痕、ヤナギの冬芽などを観察しました。
午後からは、釧路星園高校の柳敏教諭より、雪の研究の歴史や雪ができる仕組みについて解説が行われ、実際にペットボトルを利用した雪の結晶作り実験を行い、結晶が羽毛状に成長する様子を観察しました。また、偏光ガラスシートを使用した氷の結晶構造観察を行いました。参加者は販売されている氷と自然にできた氷の結晶構造の違いに驚きながらも、きれいな氷のデザインに見入っていました。
参加者は普段あまり接することのない冬の湿原で、新たな発見・興味を持って学び、豊かな自然を楽しみました。


ツル生息湿地のためのJICA研修(ブータン対象)の実施

2006年3月3日(金)から3月20日(木)にかけて、「フォブジカ谷におけるオグロヅル生息湿地の保全にかかわる環境教育等の実施・運営」研修を実施しました。今回は関係する行政区の首長、担当行政官、王立自然保護協会職員からなる4名が参加しました。
研修員はタンチョウ生息地である釧路湿原をはじめとする道東の湿地を訪れ、各自然観察・展示施設で実施されている普及啓発・環境教育プログラムを実際に体験しました。 また、ツルに象徴される豊かな自然資源を活用したエコツアーなど、地域の発展とツルの保護を両立させるのに役立つ事例についても学びました。さらにこれらのプログラムをフォブジカでの活動で活用するための応用方法などについて検討をかさねました。
研修員は3月18日に開催された「国際ツルフォーラム」、また翌日のスタディーツアーにも参加し、日本・中国・韓国におけるツルの保護と環境教育の取り組みについて、各国の専門家と討議をおこないました。
厳寒の中のフィールドワークも多く、研修員にはハードな日程でしたが、北海道ブータン協会との懇親会など、地域の人々のサポートを受けて、全員元気に研修を終えることができました。


国際ツルフォーラム「ツルと私達の未来」の開催

2006年3月18日(土)、釧路市観光国際交流センターにて、KIWC設立10年記念事業「国際ツルフォーラム〜ツルと私達の未来」を、JICA帯広国際センター、タンチョウ保護調査連合との共催により開催し、約100名の市民が参加しました。
開催協力団体である日本ツル・コウノトリネットワークの代表も務める、井上雅子・釧路市動物園ふれあい主幹による基調講演をはじめ、海外事例の発表やパネルディスカッションなど多彩なプログラムをつうじて、東アジアにおけるツルの保護と教育・普及に関する取り組みが紹介されました。
講演者の一人であるキム・ジハン・韓国生物資源センター主任研究員は、KIWCが手がけた最初のJICA集団研修「湿地及び渡り鳥保全」コースの参加者でもあり、現在は韓国内のツル保護のキーパーソンとして活躍されています。
このフォーラムには、ツルの保護について学ぶためブータンより来日中のJICA研修員も参加しました。引き続き行われた交流会では、北海道ブータン協会釧路支部によるブータンの自然・文化を紹介する写真や民族衣装が会場を彩るなか、JICA研修のスライドショーも行われました。参加者達は日・中・韓・ブータンの茶菓を楽しみながら、なごやかなひとときを楽しみました。
また、翌日19日(日)には、フォーラム講師やブータンからのJICA研修員など関係者を対象としたスタディーツアーを実施しました。阿寒国際ツルセンターにて環境教育プログラムを体験し、楽しみながらツルの生態について学ぶ工夫について討議しました。その後訪れた鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリでは、住民参加によるツルの保護活動が紹介され、ツルと人間との共存について、各国の事情を紹介しながらの意見交換がおこなわれました。


「国際ツル作品展」の開催

2006年3月18日(土)および3月29日(水)から4月2日(日)にかけて、「国際ツル作品展」を開催しました。KIWC設立10年記念事業として、「ツル」をテーマに、ジャンルを問わない手作りの作品を公募したところ、釧路地域を中心に幼稚園生から社会人まで幅広い年代の市民より、400点近い絵画、書道、工芸、手芸などの素晴らしい作品が寄せられました。
これらの作品に加え、ブータンの児童によるツル絵画をはじめとする、イギリス、ロシア、オーストラリア、韓国の絵画、写真、パッチワークなどに解説を添え、一堂に展示しました。
3月18日は釧路市観光国際交流センターで開催された「国際ツルフォーラム」会場で展示を行いました。個性豊かに表現された「ツル」達は、フォーラム参加者の目を楽しませるとともに、釧路地域の湿地生態系を象徴するツルが、いかに地域の人々にとって身近な存在であるかを強く印象付けました。
3月29日から4月2日の期間は会場を釧路市生涯学習センターにて作品展を開催し、沢山の人々が訪れました。会場では展示されている海外の国々と釧路地域とのつながりに関する質問などもよく寄せられ、作品をじっくり鑑賞する人が多かったのが印象的でした。
作品展の終了後、製作者のご厚意により約30点の作品がKIWCに寄贈されました。これらの作品を国際交流とツル保全の普及啓発に活用するため、4月21日に釧路市が開催した「ポートスティーブンス姉妹都市委員会訪問団歓迎レセプション」の会場に展示しました。さらにその後、作品の大多数はブータンの小学校で、大型・立体作品は地元の阿寒国際ツルセンターで活用されることになりました。