アンザリ湿原(イラン)との交流

ラムサール条約湿地・アンザリ湿原

 イラン北部のカスピ海南岸に位置するアンザリ湿原は、潟湖やヨシ原が広がる面積193km2の湿原で、世界有数の水鳥越冬・繁殖地として知られています。また、カスピ海における魚類にとって重要な産卵・稚魚の育成場でもあり、同時に豊かな漁場として漁業が盛んに行われています。
 イランで最も古いラムサール条約登録湿地のひとつですが(1975年登録)、近年は都市生活や農業に伴う排水や土砂の流入等により水質の悪化が進み、早急に保全への取り組みが必要な湿地として1993年に同条約のモントルーレコード* に登録されました。

*モントルーレコード
正式には「生態学的変化が既に起こっており、起こりつつあり、または起こるおそれのあるラムサール登録湿地の記録」。保全上、優先的に積極的な取り組みが必要とされた条約湿地がこの記録に登録されます。

アンザリ湿原環境管理プロジェクト

 水辺環境の改善や、多種多様な動植物が生息する貴重な生態系を守るため、日本政府はイラン政府の要請を受け、2003年から2012年まで、国際協力機構(JICA)によるアンザリ湿地保全のための保全計画策定調査と技術協力を行いました。モニタリングや管理計画作成に必要な技術・知識の提供や、湿原管理のための体制作りへの支援などの結果、2011年にはイラン環境庁を中心としたアンザリ湿原管理委員会が設立されるとともに、湿原管理のための基本計画が策定されました。また、環境教育教材の開発やエコツーリズム振興のための環境整備などの具体的な取り組みも始まりました。

さらに詳しく

釧路湿原とのかかわり

 日本のラムサール条約湿地第1号である釧路湿原で進められている、湿地保全や国際協力の取り組みは、アンザリ湿原環境管理プロジェクトの関係者にも広く知られていました。また、JICAとイラン環境庁の協働によるこのプロジェクトの期間中には、イランの専門家の技術向上のため、日本の湿地保全の現場で学ぶJICA研修も行われました。このような研修や国際会議を機会にイラン側関係者が釧路湿原を訪れ、湿原の保全と利用の方法について多くを学んできたことから、同プロジェクトをきっかけに生まれた日本とイランとのつながりを、今後の湿地保全にも活かしていくことを目的として、2011年から釧路国際ウェットランドセンター(KIWC)とアンザリ湿原関係者との交流が始まりました。

最近の交流

■JICA国別研修(イラン)「アンザリ湿原環境管理プロジェクトフェーズⅡ」本邦研修(2015年度)

 期 間 2015年8月31日(月)~9月17日(木)
 会 場 北海道、本州
 研修員 12名(イラン環境庁、イラン環境庁ギラン事務所、イラン教育局ギラン事務所、ギラン州政府、ギラン気象局、ギラン州地域水公社、地方上下水道公社)

 日本各地を巡る研修のうち、KIWCは釧路で行われたプログラムの一部を担当しました。9月8日に釧路湿原の保全・利用の概況について、講義と現地視察を行いました。  また、9月11日には、意見交換会(交流会)が開催され、湿原に関する取り組みや課題について討議しました。最後に、KIWC事務局長が総評を述べ、交流会を締めくくりました。

■JICAイラン・アンザリ湿原環境管理プロジェクトカウンターパート研修(2014年度)

 期 間 2014年10月8日(水)~24日(月)
 会 場 北海道、本州、四国
 研修員 12名(イラン環境庁、ギラン州自然資源局、地域水公社、上下水公社 州文化・遺産・手工芸・観光局、ラシュト市自治体廃棄物公社)

 全国を巡る研修のうち、KIWCは釧路で行われたプログラムの一部を担当し、研修員12人中10名を受け入れました。10月14日に釧路湿原の保全と利用の概況について、講義と現地視察(塘路湖)を行いました。  また、10月17日には釧路での研修のまとめとして交流会が開催され、KIWCも講師陣の一員として参加しました。KIWC技術委員長でもある新庄久志氏による、釧路湿原の自然再生に関する講義に続き、研修員が成果の発表を行いました。  最後にKIWC事務局長が総評を述べ、交流会を締めくくりました。

■湿地・生物多様性保全に関する国際ワークショップ

 期間 2013年2月25日(月)~28日(木)
 主催 ラムサール条約西・中央アジア地域センター
 会場 ラムサール(イラン)

 中央・西アジア地域のラムサール条約加盟国26か国から専門家や実務者約60名が参加し、各国の現状について事例発表が行われました。KIWCからは事務局長を派遣し、釧路地域の湿地保全やエコツーリズムの取り組みなどについて講演を行いました。
 このイラン訪問にあわせ、KIWC事務局長はギラン州知事や環境庁局長と会合を持ち、KIWCとアンザリ湿原合同管理委員会との交流など、今後の湿地保全における協力の可能性について検討しました。

■JICAイラン・アンザリ湿原環境管理プロジェクトカウンターパート研修(2012年度)

 期 間 2012年6月18日(月)~20日(水)
 研修員 2名(イラン環境庁)
 実施場所 釧路

 JICAのアンザリ湿原環境管理プロジェクトの一環として、釧路での研修が行われました。研修中には研修員と釧路湿原関係者とのワークショップや釧路湿原の視察のほか、研修員とアンザリ湿原保全プロジェクトの日本側関係者、KIWCとの意見交換も行われ、アンザリ湿原と釧路湿原間の技術協力と国際交流についてメモランダムが交わされました。

■釧路湿原とアンザリ湿原との交流促進に関する会合

 開催日 2012年7月7日(土)
 会 場 ブカレスト(ルーマニア)
 出席者 イラン環境庁自然環境局、UNDP/GEFプロジェクト(イラン湿地保全)、ラムサール西・中央アジア地域センター、JICA、KIWC

 釧路湿原とアンザリ湿原との交流促進のための、今後の具体的な活動やそのスケジュールについて意見交換し、メモランダムを交わしました。

■JICAイラン・アンザリ湿原環境管理プロジェクトカウンターパート研修(2012年度)

 期 間 2011年9月6日(火)~15日(木)
 会 場 東京、宮城、釧路
 研修員 5名(イラン環境庁)

 JICAのアンザリ湿原環境管理プロジェクトの一環として行われた研修のうち、KIWCは釧路での研修を受け入れ、釧路湿原の保全に関する講義・実習を行いました。また、このプロジェクトをきっかけに生まれた日本とイランとの湿地保全に係わる交流を今後どのように発展させていくかについて、研修員とKIWC事務局との間で意見交換を行い、メモランダムを交わしました。