KIWCは国際的な会議・ワークショップ・研修を通じて、地域・国を越えた「協力ネットワーク」を展開し、湿地保全等に関する情報・技術の交換を積極的に行っています。
    

 地域レベルの湿地保全活動に関する国際ワークショップ
 International Workshop on Ramsar Site Management Involving the Local
  Community
 1996年3月2日〜3月6日

 同ワークショップは、ラムサール条約第6回締約国会議(1996年ブリスベーン)における勧告6.3(「ラムサール湿地管理への地域住民及び先住民の関与に関する勧告」)ワーキング・グループの活動のひとつとして開催されました。
 ここで湿地管理への地域社会の関与の事例としてアジアおよびオセアニアの事例が検討されました。ワーキンググループのパートナー団体および専門家が湿地管理への地域住民及び先住民の参加に関する「基準並びにガイドライン案」、「第7回締約国会議へ提出する決議案」について討議しました。また、ジャパン・デーで発表された日本の事例研究のなかから、これら草案に盛り込むべき事項について報告がありました。
 同ワークショップで検討された草案は、最終的に1999年5月に中米コスタ・リカで行われたラムサール条約第7回締約国会議にて決議7・8「湿地管理への地域社会及び先住民の参加を確立し、強化するためのガイドライン」として採択されました。

  

 第7回IMCGフィールドシンポジウム −国際湿原保全釧路会議−
 The 7th IMCG Field Symposium in Japan
 1996年8月25日〜9月6日

 IMCG(International Mire Conservation Group)は、ヨーロッパを中心とした20カ国以上の湿地保全に関心を持つ専門家によって構成された世界的なNGOです。
 IMCGは、2年に一度、フィールドシンポジウムを行っており、第7回フィールドシンポジウムを釧路で開催しました。
 シンポジウムでは、各国の専門家による事例・研究発表のほか、北海道東部のラムサール条約登録湿地等をフィールドに湿地生態系保全等について討議が行われました。

  

 UNITAR/KIWC
 生物多様性に係るアジア・太平洋地域のための研修ワークショップ
 UNITAR/KIWC
 Training Workshop Series for the Asia-Pacific Region on Biodiversity
 1998年9月13日〜9月19日・1999年8月28日〜9月2日・2001年3月24〜29日
 2003年3月15日〜21日・2004年11月29日〜12月3日・2006年8月27〜31日
 2008年6月29日〜7月4日

 国連訓練調査研修所(UNITAR)が、外務省(日本)、UNESCO等の関係機関と協力し、環境関係の条約及び多国間協定(生物多様性条約・世界遺産条約、ラムサール条約等)の履行を推進するため、各国政府行政機関(特に途上国)を対象とし、同ワークショップを実施しました。
 環境法の必要について、主にアジア・太平洋地域の政府行政官の意識を高め、また生物多様性に関する多国間条約の条項について綿密な検討を行い、確実な履行のための国家的手法を明らかにすることを目的とされました。
 国連訓練調査研究所(UNITAR)が、アジア・太平洋地域の政府行政官(特に途上国)を対象に、生物多様性に関する研修ワークショップをKIWCと共催しています。  生物多様性の保全について毎回テーマを定め、釧路地域の豊かな自然や充実した施設を活用し、事例検証やスタディーツアー、グループ実習など多彩なプログラムを実施しています。ワークショップとUNITARによるその後のフォローアッププログラムを通じ、参加者が自国における生物多様性関連の政策立案や管理運営に貢献し、さらに自国を含むアジア・太平洋地域の指導者としてその経験を活かすことを目的とした人材育成を行っています。

    

 JICA湿地及び渡り鳥保全研修コース
 1994年度〜1998年度

 アジア・太平洋地域、アフリカ、南アメリカの途上国の湿地保全、特に水鳥保護を担当する中堅専門技術者を対象に、国際協力事業団(JICA)北海道国際センター(帯広)を実施機関、環境庁自然保護局野生生物課、釧路国際ウェットランドセンターを受入機関として実施されました。
 同研修は、自国における湿地自然資源の保全、渡り鳥保護の意識を高め、地域レベルの湿地及びその生態系の保全、自然資源のワイズユース等に関する知識・技術の移転を図るとともに、ラムサール条約の目的に則した国際協力プロジェクトの推進を目的として実施され、13カ国32名が参加しました。
 同研修に参加した多くの研修員が研修終了後、国の代表として、ラムサール条約締約国会議等で活躍しています

    

 JICA湿地環境及び生物多様性保全研修コース
 1999年度〜2003年度

 アジア・太平洋地域、アフリカ、東ヨーロッパ、南アメリカの途上国の湿地及びその生物多様性保全を担当する中堅専門技術者を対象に、国際協力事業団(JICA)北海道国際センター(帯広)を実施機関、環境省自然環境局野生生物課、釧路国際ウェットランドセンターを受入機関として実施されました。5回にわたる集団研修で、合計22カ国45名が参加しました。
 同研修は、ラムサール条約の理念に基づき、自国における湿地の自然資源のワイズユース、生物多様性保全の意識を高め、国・地域レベルの保全活動を促進できる人材を育成することを目的に、日本各地の湿地でさまざまなプログラムを行いました。

    

 JICA自然公園の管理・運営と利用(エコツアー)研修コース
 1998年度〜

 アジア・東ヨーロッパ地域の自然公園の管理・運営や観光振興を担当する行政官等を対象に、国際協力事業段(JICA)北海道国際センター帯広(2004年度より国際協力機構帯広国際センターに改称)を実施機関、KIWCを受入機関として実施されています。
 地域の環境や文化に配慮しつつ、自然や文化的遺産を持続的に活用するための一手法としてのエコツアーについて、北海道東部の国立公園等で行われているさまざまな事例(乗馬によるハイキング、カヌー、自然観察ツアー等)を紹介しています。体験実習のほか、理念や環境モニタリング手法に関する講義や指導を通じて、研修員がエコツアーに関連する総合的な知識技術を習得し、自国でのエコツアープログラムの立案や振興に活用することを目的としています。
 2002年度から集団研修となり、訪問地域や参加国・人数を拡大して、エコツアーに関する技術移転のより一層の推進をめざしています。


 JICA湿地における生態系・生物多様性とその修復・再生と賢明な利用研修コース
 2004年度〜2008年度

 世界各国の途上国の、湿地とその生物多様性保全を担当する中堅専門技術者を対象に、国際協力機構(JICA)帯広国際センターを実施機関、環境省自然環境局野生生物課、釧路国際ウェットランドセンターを受入機関として実施されています。
 この研修では、湿地環境がもたらす豊かな生物多様性を保全しつつ、自然資源の持続的な利用を可能にするための先進事例を学ぶため、日本各地のさまざまなタイプの湿地を訪問しています。一度失われた湿地環境を修復・再生させるための試みについても、行政・地域住民・NGOなど多数の視点に基づく取り組みを紹介し、その理念・技術を自国の湿地保全に活用するための具体的な情報を提供しています。


 地球温暖化と湿地保全に関する国際ワークショップ
 The International Workshop on Climate Change and Wetland Conservation
 2001年9月20〜21日

 この国際ワークショップは、国内外の地球温暖化の専門家と湿原保全の専門家が一堂に会し、相互の問題を合わせて考える初の機会として、国立環境研究所の主催、日本国際湿地保全連合とKIWCの共催により、釧路市観光国際交流センターで開催されました。最終日には、ワークショップ参加の専門家や、温暖化防止に関する先鋭的な取り組みを推進している釧路の企業等関係者を講師に、市民対象のシンポジウム「地球温暖化と釧路湿原」を開催しました。
このシンポジウムでは、約130名の参加者が産業と湿地保全の側面から、地球温暖化防止について討論しました。

  

 農業地帯における河畔緩衝帯の水質浄化能の解析とその設置法に関する
 国際ワークショップ
 The International Workshop on Efficiency of Purification Process
 in Riparian Buffer Zones, their Design and Planning in Agricultural Watersheds
 2001年11月5日〜9日

 この国際ワークショップは、河畔緩衝帯国際会議企画運営委員会が主催し、北海道農業研究センター、日本土壌肥料学会北海道支部、そしてKIWCの共催により開催されました。  国内外の専門家約90名が一堂に会し、湿地や湖沼に流入する水の浄化に果たす河畔林の役割と、その効果的な設置方法等、湿原の保全にも役立つ最新の知見について討論が行われました。
 その他最終日プログラムとして、一般参加型のフォーラム「河畔林と釧路湿原」も合わせて開催され、ワークショップ参加専門家の中から4名が一般参加者にも分かりやすい語り口で公開討論を行いました。

  

 国際ワークショップ「ラムサール湿地の賢明な利用―ラグーン湿地に注目して」
 2003年7月23日

 ラムサール条約釧路会議開催10周年を記念し、 ラムサール湿地ワイズユース開催実行委員会の主催により釧路市観光国際交流センターにて開催されたものです。 KIWCは主催者の構成団体として、この会議に参加しました。
 会議にはアジア地域を中心に13カ国より110名が参加、ラグーン(汽水湖)湿地の賢明な利用について討議しました。昨年開催された第8回締約国会議において、ラムサール賞を受賞したインドのチリカ湖における湿地再生事業をはじめ、数多くの事例が報告されたほか、ラグーンの保全と修復や、自然資源の賢明な利用などの解決について意見がかわされ、その成果が「会議声明」として採択されました。

 

 ラムサール条約釧路会議10周年記念事業
 公開座談会「トーク・TALK釧路会議」「市民交歓会」の開催
 2003年7月22日

 1993年に釧路で開催されたラムサール条約第5回締約国会議開催10周年を記念し、 同会議をふりかえりつつ、今後の湿地保全のありかたを考える公開座談会を、釧路市観光国際交流センターにて開催しました。 語り手として、当時の同会議副議長であったL.メイソン氏(アメリカ)と、道東のラムサール湿地の姉妹湿地であるオーストラリア・クーラガング湿地の保全に取り組んでいる、 ウェットランドセンター・オーストラリアの理事長、C.プリエット氏を招き、KIWC技術委員長の辻井達一氏をホストに、意見の交換を行いました。
 会場には約90名の市民が訪れました。座談会終了後にひきつづき開かれた「市民交歓会」では、会議当時の記録ビデオの公開も行われ、同会議を成功に導く大きな力となった「あらゆる場面での地域住民の参加と協力」の様子が再現されした。

 

 河川環境観察会
 2002年10月5日、2003年10月18日、2004年10月16日、2005年10月10日、11月3日

 (財)河川環境管理財団 河川整備基金の助成により、  釧路川の水質と環境について学ぶ観察会を、釧路湿原国立公園連絡協議会との共催で実施しました。同協議会所属の「釧路湿原こどもレンジャー」を中心に、毎回約30名が参加しました。
 2002年、2003年は屈斜路湖からラフティングボートで釧路川源流部を観察しました。2003年ではさらに、塘路湖からカヌーによる釧路川中流の川下りを体験し、多くの野生生物を身近に観察しました。 また、2004年は釧路湿原北部の天然記念物地域であるキラコタン岬にて、湧き水のようすを観察したあと、カヌーを用いた釧路川の観察を行いました。 その他、手作りの箱メガネによる水中観察、廃材利用による工作、浄水場視察など、釧路川の自然と水について楽しく学ぶプログラムが実施されました。
 2005年度は対象を一般と児童とに分け、2回の開催としました。大人向けのツアーとしては2003年に参加者に大好評だった、ラフトボートとカヌーによる釧路川源流〜中流の河川環境の観察を、児童向けには塘路湖畔でのハイキング・地引網体験とカヌーによる湖沼・河川の観察プログラムを行いました。

 

 冬のウェットランド・ウォッチングツアー
 2001年度〜

 厳冬期の釧路湿原を訪れ、冬にしか出逢えない湿原の魅力を発見する「冬のウェットランドウォッチングツアー」を、釧路地域の市民を対象に2001年度より毎年開催主催しています。
 2001年度より毎回15名前後の参加者が、SL「冬の湿原号」で、雪景色や野生生物の姿を楽しみつつ、釧路湿原を訪れました。 湿原では雪上に残された生き物の足跡を観察したり、厚く凍った湖面の上で、氷の観察を行ったりしました。その他にも氷の結晶作りの実験や、ネイチャークラフト、釧路湿原クイズなど、子供から大人まで楽しめる、盛りだくさんのプログラムが実施されました。

 

 国際協力機構(JICA)湿地の生態系・生物多様性と
 その修復・再生および賢明な利用研修コース
 2004年度〜2008年度

 アジアや南米、アフリカ、東ヨーロッパなど世界各国の湿地保全に関わる官庁職員や、研究機関の専門家などを対象に、国際協力機構(JICA)帯広国際センターを実施機関、環境省およびKIWCを受入機関として実施されました。
   湿地の生態系や生物多様性の保全について、自然環境の修復・再生事業や、湿地の賢明な利用促進による地域開発にも視野を広げた事業の立案、実施の中心となる人材の育成を目指しています。
 研修では釧路湿原で自然再生事業が進行中の北海道東部をはじめ、日本各地の多種多様な湿地を訪れて、講師・関係機関の協力のもと、湿地保全の事例紹介や視察、体験実習など広範にわたるプログラムを実施しました。

 

 JICA地域提案型草の根技術協力「ブータン・フォブジカ谷における
 ツル生息湿地の保全にかかわる環境教育等の実施・運営」研修
 2003年度〜2005年度

 絶滅の危機にあるツルの一種・オグロヅルは、ブータン国内の湿地「フォブジカ谷」で越冬することが知られています。
 KIWCではブータンに対し、地域の豊かな自然と、ツルと湿地の「賢明な利用」の事例を活かした、ツルと保全のための環境教育に関する研修を実施しています。研修の対象はブータン王立自然保護協会(RSPN)の職員や地方自治体の関係者などです。 RSPNは、ツルを含むブータンの野生動植物とその生息環境の保全において、国内で中心的な役割をはたしている団体です。釧路地域ではこの団体に対し、研修や、ツル専門家・シニアボランティアの派遣など、JICAの事業をつうじて、さまざまな協力がおこなわれてきた経緯があります。  これらの支援の一環として、KIWCではブータン側からの強い要請を受け、JICA帯広国際センターの主催する草の根技術協力として、地域提案による研修事業を実施しました。
 2003年度より3回にわたって合計9名の研修員を受け入れ、2005年度にはツルの専門家を派遣による技術指導を行いました。これらの取り組みの成果は、専門家の帰国と研修実施にあわせ2006年3月に開催された「国際ツルフォーラム」で市民に紹介されました。

 

 JICA住民参加型自然環境保全研修(モンゴル)
 2007年度〜2009年度

JICAがモンゴルのラムサール登録湿地・ウギノール(ノール:湖の意)で実施した国際協力事業「集水域管理モデルプロジェクト」の一環として、湖畔に来訪者向けのインフォメーションセンターと地域住民活動用施設が建設されました。KIWCでは、この施設の運営を通じ、観光客と地域住民の双方に対し、ウギノールの自然に関する情報提供と、湿地環境の適正な利用について普及啓発活動を行える人材を育成するため、施設のスタッフを含む地域関係者や、これらの活動を行政面で支援する役割を担う国・地方自治体担当者を対象とした研修を行いました。
研修では道東の国立公園やラムサール登録湿地の自然系施設で、地域のエコツアーや環境教育活動を行っている民間団体等の事例を参考に視察や体験実習を行いながら、施設展示の手法や地域住民への普及啓発や協働推進に必要な知識などを学びました。