KIWCは、湿地の保全とワイズユースを進めるため、専門家による技術委員会を組織し、研究やモニタリングをとおして、データベースの構築をはかるとともに、湿地の管理に関して技術的な助言をおこなっています。 
技術委員会では、年度ごとに個別のテーマを定めて、調査研究を実施しています。
2013〜2015年度のテーマは「地域における湿地と恵み」です。近年、地域独特の文化と湿地の結びつきなど、人々の暮らしにおける湿地の様々な役割が注目され、ラムサール条約においても、その重要性が決議で認知されるに至っています。技術委員会では、湿地に対するこのような価値観を地域の人々と共有し、湿地の保全とワイズユースをさらに進めるため、湿地と地域の繋がりについて「恵み」の視点から調査研究します。

KIWC技術委員(2013〜2015年度)

技術委員長 新庄 久志 環境ファシリテーター 霧多布湿原館長
技術委員 牛崎 方恵 塘路湖エコミュージアムセンター 指導員
音成 邦仁 タンチョウコミュニティ 代表
澁谷 辰生 厚岸町環境政策課 厚岸水鳥観察館 主幹
高嶋 八千代 道東野生植物研究家
照井 滋晴 NPO法人 環境把握推進ネットワークPEG 代表
針生 勤 一般財団法人 釧路市民文化振興財団
生涯学習推進アドバイザー
阪野 真人 霧多布湿原センター 次長
蛭田 眞一 北海道教育大学釧路校 教授
若菜 勇 釧路市教育委員会 阿寒生涯学習課
マリモ学芸主幹
   (50音順)

なお、オブザーバーとして、KIWC構成団体である環境省釧路自然環境事務所、北海道釧路総合振興局、釧路市、釧路町、標茶町、鶴居村、厚岸町、浜中町が参画しています。

※過去の技術委員


研究テーマ
 
1995年度 湿原のエコツーリズム

湿原をレクリエーションの対象として利用する人々が飛躍的に増加するなど、湿地に対する人々の関心が高まってきています。しかし、一方で多数のビジターを集めることができる観光(マスツーリズム)による環境へのダメージが懸念されています。
そこで、生態系や地域文化に悪影響を及ぼすことなく、自然や文化を楽しみ、また地域に貢献することのできる観光事業が求められるようになり、「エコツーリズム」という概念がより注目されるようになってきました。
KIWC技術委員会は、1995年度、釧路湿原、厚岸湖・別寒辺牛湿原、霧多布湿原をフィールドとして、エコツーリズムの必要性や課題を明らかにすることを目的とした研究を行いました。

[ 1995年度技術委員 ]


 
1996〜1997年度 河川流水・湧水の環境調査

湿原の水源としての3要素、河川流水、雨水、湧水にかかわる環境調査を実施して、過去のデータも用いながら、湿原水源の保全、維持管理のための手法等を検討しました。
水文・植物・鳥類・魚類・保全管理等の分野の情報を収集し、その内容を検討するとともに、水源地としての安定した湿地環境と不安定な湿地環境の比較検討をすることを目的として、ラムサール条約登録湿地(釧路湿原、厚岸湖・別寒辺牛湿原、霧多布湿原)をフィールドに、1996年から2年間、調査・研究を行いました。

[ 1996〜1997年度技術委員 ]


1998〜2000年度 道東湿地群をフィールドとする環境教育

今日、地球規模のさまざまな環境問題に直面しており、その解決のために、自然と人の共生をめざす環境教育の推進が求められています。
ラムサール登録湿地を含む、道東湿地群をフィールドとする地域における環境教育の目的、意義、役割について明らかにするとともに、環境教育プログラムについて検討し、国際的に重要な湿地生態系の保全に寄与することを目的として、1998年から調査・研究を行いました。
2001年3月に、活動報告書(A4版70ページ)が発行されました。

[ 1998〜2000年度技術委員 ]


2001〜2003年度 湿地及びその環境の修復・再生の試み

2003年に施行された自然再生推進法に基づき、現在、釧路湿原をはじめとする各地で自然再生事業がおこなわれつつあります。
KIWC技術委員会では、湿原の乾燥化や外来種の脅威など、釧路地域の湿地環境に影響を与えている種々の問題に着目しました。これらの問題を解決し、湿地の自然を修復・再生するための方法について、希少種を含む野生動植物の保護やラムサール条約の活用、市民活動など、さまざまな視点から、検討をおこないました。
研究の成果は報告書(A4版96ページ)にまとめられ、2004年3月に発行されました。

[ 2001〜2003年度技術委員 ]


2004年度〜2006年度 湿地の保全と賢明な利用のための広報・教育・普及活動

2004−2006技術委員会報告書の発行
ラムサール条約の求める「CEPA: Communication(コミュニケーション), Education(教育)、Public Awareness(普及啓発)」に着目し、地域の人々の湿地に対する理解を深め、その保全に対する意識を高めるための手法について調査研究を行いました。
鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリ、および霧多布湿原センターおける事例研究会などを通じて、委員各自が自ら実践している取り組みを紹介し、湿地の保全と賢明な利用のためのCEPAについての提言を行いました。
2007年3月に活動報告書(A4版70ページ)を発行し、関係機関等に配布しました。


2007年度〜2009年度 湿地生態系にかかわる外来種

今日、湿地生態系に影響をあたえる人間活動のひとつとして「外来種」が注目されていることから、湿地生態系にかかわる外来種の現状とその課題等について調べるため、釧路地域に生息する特定外来生物、ウチダザリガニとオオハンゴンソウを対象に現地視察を行いました。
さらに2009年度は、当センターがフィールドとする「釧路湿原」「厚岸湖・別寒辺牛湿原」「霧多布湿原」「阿寒湖」において、同じく特定外来生物であるミンクの生息状況についてアンケートによる調査を行い、その成果を報告会やリーフレット「ミンクのはなし」をつうじて広く発信しました。
また2010年3月には、調査の詳細を含め、各委員の執筆による釧路地域の外来種に関する最新の知見を活動報告書(A4版 93ページ)にまとめ、関係団体や調査協力者等に配布しました。

[ 2007〜2009年度技術委員 ]


2010年度〜2012年度 生物多様性の観点からみた住民参加による水環境の修復

釧路地域では釧路湿原の自然再生事業など、水環境の修復について国内でも先進的な取り組みが進行中です。生物多様性の面からみた環境修復のあり方を検証するとともに、このような息の長い取り組みを続けていくために不可欠な、地域住民の積極的な事業参加や、そのための普及啓発の手法について、事例研究を中心とした調査を行いました。また、その成果を報告書にまとめ、2013年3月に発行しました。
技術委員会 あわせて、2013年3月に報告会を開催し、市民に向けて3年間の活動を発表しました。

[ 2010〜2012年度 KIWC技術委員 ]